
こんにちは。塾長です。
講座で、年輪の成り立ちや製材方法による木目の見え方、枝の成長の仕方について話していたときのこと。
私が森で拾ってきた「枝の付け根」の木片を見せたんです。
森を歩いていると見つけることがあるんです。
木の幹の部分は朽ちてしまって、本来幹の中に埋まっていた枝だけが残ったのかな。ちょうど山羊の角のよう。自然が作った造形は、本当に不思議で、美しい。
それを見て初級生の彼女がカバンの中から、
あるものを取り出しました。
見せてくれたのは、小さな木のペンダント。
それがまた、いい表情をしているんです。
見せてくれたそのペンダントは、独特の模様も現れて、なんとも魅力的な木のコブです。
裏を見ると、枝の年輪が見える。枝が折れたあと木の成長とともに年輪で覆われたんでしょうね。

高山に来てすぐのころ、町のお店で見つけたらしいのですが、「これだ」と思って、すぐに買ったそうです。
通常なら捨てられてしまうような木の部分を、素材として活かした作り手もすばらしい。
そして、それに心を動かされて手に取った彼女の感性も、とてもいいなと思いました。
ちょっといびつな形をした、いわゆる「コブ」の部分。
素材としては敬遠される場所ですが、そこには木の生きた痕跡が、しっかりと刻まれています。
「欠点」として捨ててしまうか、そこにこそ魅力を見出して活かそうとするか。
その違いは、ものづくりを学ぶ上で、とても大きい。
木目のきれいさだけに目を奪われるのではなく、枝やワレ、コブのような、いわば“いびつな部分”にこそ、目を向けてほしい。
その裏側にある構造を考え、さらにその構造がどういう成長の過程で生まれたのかまで、想像してみてほしい。
更には、進化の過程で植物が獲得してきたことにも目を向けてほしい。
講座のテーマは”樹から木へ”。しばらくは木材構造の話が続きますが、生命としての樹の実力に迫ります。
それでは、またの更新をお楽しみに。
小木曽 賢一
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