
こんにちは。
春の光に包まれて、山の木々もだんだんと芽吹いてきました。
全日講座の今日は、ライターの西川栄明さん主催の「写真撮影講座」に参加。
その合間に、塾長が「木材検索」の講座を行なっていました。
今回は、その講座の様子と、そこで感じたことをお伝えします。
ミーティングルームに入ると、机の上には32種の木材サンプルがずらりと並んでいました。
どれもハガキサイズほどの小さな板ですが、色、重さ、手触り、香り…一つとして同じものはありません。

塾長:「みなさんは、まだまだ木の名前も知らないでしょう。
でも、この講座では木の名前なんか教えませんよ。
知識も何もない状態でいいんです。
まずはみなさんの“五感”だけを使って、木材サンプルの特徴を調べてください。
ただし、スマホや図鑑は使わないで。
使っていいのは、五感だけですよ。」
最初は少し戸惑いも見られましたが、塾生たちはすぐに木片を手に取り、じっと見つめたり、持ち比べて重さを確かめたり、鼻を近づけて匂いを感じ取ったりと、それぞれに観察を始めていました。

ただ見ているだけでは分からないことも多いようで、塾長がそっとルーペを手渡します。
塾生:「よく見える!」
ルーペを使うことで、目視では見えなかった木の細部、たとえば導管の様子などが見えてくるようでした。
塾長:「広葉樹には、導管の並び方に3つのパターンがあります。
環孔材、散孔材、放射孔材ですね。」

興味が先立つところにわずかな知識が与えられることで、観察がより立体的になっていく。
塾生たちの集中力が増していくのが伝わってきました。
講座の途中、塾長がこんなことを話してくれました。
塾長:「教えてしまうと、塾生たちはそれを“暗記”してしまう。
木材図鑑を読めば事細かに特徴が書いてあるけど、観察じゃなくて文字を覚えることになる。
そこに五感は発動していないんです。
職人としての成長には、五感を鍛えることが必要。
頭で学習するのではなく、自分の“センサー”で観察する能力を育てたいんだよね。」
この言葉には、とても共感しました。
便利な情報がすぐ手に入る時代だからこそ、自分の感覚で確かめる経験がなおさら貴重に感じます。
塾長:「現代人って、刺激の強い情報に慣れて、五感が麻痺してるからね。
かなり意識して使わないと、五感は研ぎ澄まされていかないよ。」
たしかに日々の生活の中で、意識的に五感を使う機会は減っているかもしれません。
でも、こうして一つひとつの木に触れながら、何かに気づこうとする時間は、自分の中の“感覚の輪郭”がはっきりしてくるような気がしました。
講座の最後、塾長は少し先の未来を見据えてこんなことも話されました。
塾長:「木はいい、木製品はいいって私たち大人は言うけど、今の子どもたちが大人になったときにもその感覚がちゃんと残っているのかって、心配なんですよね。
だから、幼少期に五感を鍛えるなら、まずは“木のおもちゃ”から。
そう思いますよ。」
木のおもちゃには、手触り、音、重さ、香り、あたたかさ
――五感を優しく刺激するものすべてが詰まっている。
機能ではなく、感覚で遊べる素材です。
何気ない遊びの中にある、こうした“感覚の記憶”こそが、将来どこかで「木っていいな」と思える土台になるのかもしれません。
たくみ塾の講座では、「教えない」からこそ生まれる発見が、随所にちりばめられています。
今日のような五感を使う観察は、モノづくりの入口としてとても大切なプロセスなのだと、改めて感じました。
それでは、またの更新をお楽しみに。
Keyでした🌿
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