
こんにちは。塾長です。
飛騨も青葉が目に眩しい季節になりました。森を歩くだけで、目も心も洗われるようです。
この前の全日講座では、塾生たちと一緒にオークヴィレッジ裏山、通称「シルヴァンの森」へ足を運びました。目的は「葉っぱ検索」。そして森の中の植物の葉っぱを観察しながら、それぞれがどんな戦略で生きているのかを探る実習です。
…のはずが、森に入る前に思わぬ足止め。菅原邸の庭だけで気づけば1時間。毎回のことながら、オークヴィレッジの自然の豊かさに心を奪われてしまいます。
庭先だけでも、いろんな形の葉が見つかります。塾生たちは「これ、さっきのと同じ?」と手に取って比べながら、検索図鑑とにらめっこ。けれど、なかなか正解には辿りつけない。「Googleレンズが便利やで」と誰かが言うけど、それじゃ観察力は育たない。時間をかけて、じっくり見ることの価値を伝えます。

シンボルツリーのトチノキの下で、「登れるか?」とけしかけると、負けず嫌いの初級生たちが次々と木に取りつく。最初は「ムリムリ」と言っていた塾生も、何とか枝をつかみ、体を引き上げる。できたときの顔は、本当に嬉しそうでした。全員で登って、記念撮影!



お昼をはさんで午後からようやく森へ入ります。ギャップを探したり、下層植生の様子を観察したり、植物の成長戦略や葉っぱの形の意味を知ると、静かな森が一変してダイナミックに見えてきます。
尾根沿いを歩くと、左右で森の様子がまったく違います。片方は明るく、下層植生が多い。この森は、俳優の故・菅原文太さんが手入れをした森。どんな手入れをしたのか分かるでしょうか? 木漏れ日が届くように間伐され、光を求めて草木が育つ。人の手が入ることで、森の多様性が豊かになっているのです。

もう片方は、手が入らず暗く、下草もほとんど見られません。こうした違いが、森の呼吸を肌で感じるきっかけになります。
谷に降りると沢に辿り着き、苔むした倒木があちこちにあります。倒木の一本橋を渡ったり、沢に手をつっこんだりして遊びました。外から見るとただの緑色の森ですが、一歩中に入って知識を少し加えると、生きている森がリアルに見えてきます。

ただの作り手になるな。森と暮らしをつなげる作り手、そのために何が必要か、それぞれに考えてほしい。
植物は歩けず、自分で育つ場所も選べません。だからそれぞれに明確な生存戦略を持ち、他の植物と競争し、時には協働しています。虫害を避けたり、虫を利用したり。そこには長い年月をかけた進化のプロセスがあります。目の前の一本の木の成長のみならず、森全体の成長、そして地球史における植物の進化、その複層的な関係が理解できると良いね。
木工は素材として「木」を使わせてもらうけれど、それは森の恵みです。単に「木材」として扱ったら、木や森に申し訳ない。それを知識ではなく経験として掴んでほしいのです。
「森を学ぶ」つもりが、実は「森に学んでいる」。そんな感覚を持ってほしい。
それでは、またの更新をお楽しみに。
小木曽 賢一
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