
たくみ塾の教育テーマの一つは「環境教育」です。
ただし、ここでいう「環境」とは、自然環境だけではありません。たくみ塾では、「自分と地域のつながり」、「自分と森林のつながり」を大切にしています。
そして、たくみ塾での木工修行では、「自分と自分の中の自分」のつながりも重要な要素です。
それはつまり、「意識」と「無意識」の関係性に深く関わります。
よく言われることですが、人間の意識と無意識の比率は、1:99とも言われています。
どれだけ意識で「頑張ろう」と思っていても、無意識の99%がそれに逆らえば、結果はついてきません。
逆に、その99%を味方につけることができれば、大きな力になります。
だからこそ、たくみ塾では、日々の修行の中で「凡人習慣」を「職人習慣」へと書き換えることを大切にしています。
それは、無意識の99%を自分の味方にしていく作業でもあります。
例えば、思うように作品が仕上がらなかった時。
うまくいかなくて、ただ落ち込んで手が止まってしまう人もいます。
思い通りにいかなくて、材料や道具のせいにしてしまう人もいます。
あるいは、「まあ、こんなもんだろう」と自分をごまかして済ませてしまう人もいます。
でも、それでは「うまくいかなかった原因」から学ぶことはできません。
たとえ「もっと上手くなりたい」と願っていても、心の奥の99%――無意識の部分が、「もうやめよう」「向いてないんだ」とささやいてくるのです。
そこで必要なのは、「なぜ思うようにいかなかったのか」を、感情ではなく事実として受け止めること。
材料の特性か、手順のミスか、刃物の状態か。
そうやって、冷静に振り返る力がなければ、職人としての成長はありません。
だから、失敗した時に「自分を責める」でも「人のせいにする」でもなく、「学びに変える」という習慣――つまり職人習慣に、日々の自分を書き換えていくことが大切なのです。
この繰り返しが、「失敗から学ぶ」回路を、自分の中に育てていきます。
そしてそれこそが、自分自身と向き合い、「自分の中の自分」とつながっていくということなのです。
小木曽 賢一
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