
3回にわたって、“作る”ということをいろんな角度から見てきた。
原点を思い出し、責任を知り、型を極める——。
その続きとして、最後は「一歩を踏み出す」話をしたい。
ここまで読んできたあなたは、もう気づいているはずだ。
“モノづくりを仕事にする”というのは、単に技術を学ぶことでも、安定した職を得ることでもない。
それは、自分の人生の舵を、もう一度自分の手に取り戻すことだ。
社会人として働く中で、「このままでいいのか」と感じた瞬間があったと思う。
効率も組織の歯車としての役割も、否定はできない。
でも、自分の中の“作りたい”という声を無視し続けると、どこかで心がすり減っていく。
人は、手で何かを作るときにだけ、「生きている」という実感を取り戻す瞬間がある。
その手応えを仕事に変えていく——それが、職人の道だ。

たくみ塾では、入塾説明会の最初にいつも一つの問いを投げかけている。
「あなたが“作る”という言葉に惹かれたのは、いつの記憶ですか?」
木を削る感触、父親の工具箱の匂い、夏休みの工作で夜遅くまで手を動かしていた時間。
その記憶の中に、今も変わらずあなたを動かしている原点がある。
それを思い出したとき、「自分の中の時間が戻ってくる」と感じる人は多い。
そこにあるのは懐かしさではなく、未来へのヒントだ。
モノづくりの道を選ぶということは、自分の時間を丁寧に使うことでもある。
一枚の板、一本の線に、思考と感情を注ぐ。
それを続けるうちに、技術が育ち、人が変わる。
そして、変わった自分が作るものが、やがて誰かの暮らしを変えていく。
その循環が、職人という生き方の本質だと思う。
もちろん、簡単な道ではない。
収入や将来への不安もある。
それでも、多くの塾生がこの道を選んでいるのは、“本当の喜び”を知ってしまったからだ。
形になった瞬間の静かな感動。
使ってくれた人の笑顔。
その一つひとつが、日々の支えになる。
モノづくりの世界は、あなたを待っている。
完璧な準備はいらない。必要なのは、「やってみたい」という心の熱だけだ。
入塾説明会では、木工の現場を実際に見て、塾の考え方や学び方を直接確かめてもらっている。
気になることは何でも聞いていい。
あなたが抱えている不安や迷いも、
ここでは一緒に言葉にできる。
まずは、入塾説明会に参加してみよう。
そこから、自分の手で生きる人生が、少しずつ動き出すはずだ。
そして、「自分にしかできないモノづくり」を形にしていこう。
シリーズを通して伝えたかったのは、“作る”という行為の中にある静かな強さだ。
それは派手ではないが、人の暮らしを支える根っこになる。
あなたがその根を伸ばす側に立つ日を、心から楽しみにしている。

小木曽 賢一
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