
工房では、抽斗の制作が追い込みに入っていた。
ワゴン本体は既に組み立てが終わって、養生するために毛布が被せてあった。毛布を取り除いて本体を一台一台眺めていると、スタッフが側板と天板の材料の色合わせにこだわっているのを感じた。側板は4~5枚の板が接ぎ合わされているが、接ぎ面がどこにあるかこの写真から分かるだろうか?白太の部分、赤身の部分とも上手に色合せされているから、違和感がない。こだわらずにランダムに板を矧ぎ合わせたら、こうも綺麗な表情にはならないだろう。
側板と天板の色も、50台のワゴンそれぞれ上手に色合わせをしてある。
この製品には国産のカバ材を用いている。カバは辺材の色が白く芯材が赤みを帯びていて、そのコントラストはとてもきれいだ。ただし、それは一枚の板だけを見た時だ。何枚もの板を矧ぎ合わせて幅広の板にしようと思うと、色のばらつきは厄介なものとなる。芯材の赤身の色も濃い色から薄い色まで板によってバラツキがある。板目もあれば柾目もある。これだけきれいに色合せするのは随分と手間を掛けたことだろう。
敢えて心材と辺材で色の差のあるカバという材料を用い、一手間も二手間も色合わせに手間を掛けることで製品によって表情の違いを生み出すのが、この製品の強みだろう。大手のメーカーでは、一台一台表情の違いのある製品を作ることは至難の業だ。扱いにくい素材の癖を職人が存分に見ぬくことで魅力溢れる商品となる。図面や仕様書に表記されている以上の製品をを作ろうという職人の腕の見せ所だ。
組立を待つ抽斗の側板も、左右の板が色合わせされて積まれていた。
木工の制作図面は、A3サイズの用紙に外形線が引かれ、寸法が記入されているだけだ。木目も描いてなければ、色合わせの指定もない。
その図面に従って目の前の個性の強い無垢材を調理するのは、職人のセンスに尽きる。どれだけでも手を掛ければいいというものではなく、手際の良い色合わせの作業も求められる。個性ある多様な表情を持つ無垢材を扱うには、やはり経験がモノを言う。
森林たくみ塾
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