
こんにちは。
森林たくみ塾の塾長です。
木工修業の現場では、毎日たくさんのことを経験します。
初めて使う道具、初めて触れる木の感触、初めて聞く言葉。
でも、それらの「初めて」は、あっという間に過ぎていってしまいます。
初日から、スタッフからは容赦のない指示が飛び交います。
聞いたこともない専門用語が、次々と耳に入ってくる。
スタッフの頭の中にあるイメージが、そのままの速度で言葉として飛び出してきます。
その言葉を聞き取り、頭の中でイメージを組み立てる。
最初のうちは、何を言われているのか、どうすればいいのか分からず、戸惑うことも多いでしょう。
だからこそ、私たちは「まとめのノート」を書くことを大切にしています。
ノートの目的は、「忘れない」ため。
でも、ただ記憶をとどめるためだけではありません。
書くことで、自分の中に落とし込んでいく。
自分なりの言葉で、手で描いて、図にして。
そうして初めて、学びが自分のものになっていきます。
耳で聞いたことって、思っているよりも早く、薄れていきます。
ある研究では、1日で約70%、1週間後には90%近くを忘れてしまうとも言われています。
だから、「その日のうちに書く」ことが大切なのです。
ノートに、決まった書き方はありません。
文字だけでもいいし、図やイラストが中心でもいい。
A4サイズ以上の紙に、好きなように自由に書いていいんです。
大切なのは、「上手く書くこと」じゃなく、「続けて書くこと」。
毎日続けていれば、必ず自分の言葉が見つかってきます。
私が思い出すのは、アニメ『ベイビーステップ』に出てくる、えーちゃんのノート。
彼は、テニスの技術を一つひとつ、徹底して書き残していきました。
試行錯誤の記録、失敗の記録、気づいたことの記録。
そのノートが、彼の実力の土台になっていった。
それは、木工にも通じるところがあると思うんです。
作業のやり方、道具の使い方、木の性質、スタッフの言葉――
全部、一度に覚えようとするのは無理です。
でも、今日やったことを一つだけでも書いて残しておけば、
それが積もって、いつか自分だけの「教科書」になる。
わからないことは、そのままにしないこと。
「たぶんこういう意味だろう」と曖昧に理解したまま、翌日に持ち越さないこと。
小さな疑問も、ノートに書いておくと、あとで解決の糸口になります。
そして、教わったことだけじゃなく、自分が「面白い」と思ったことをどんどん書いてください。
作業の合間にふと気づいたこと、木の香り、道具の感触。
そんな「気になったこと」ほど、自分にとって大切なヒントになるからです。
記録を続けることは、自分の学びを信じること。
今日の自分にとっては当たり前でも、
明日の自分にとっては、貴重なヒントになるかもしれません。
最初は「何を書いていいかわからない」と感じることもあるでしょう。
でも、それでもいいんです。
まずは鉛筆を手にとってみる。
覚えていることを、思い出す限り書いてみる。
一行でも、一枚でも。
ノートは、いつか自分の力になります。
誰かのためじゃなく、自分のために書く。
書いた分だけ、自分の中に技術と感覚が残っていきます。
うまくなることを焦るより、
記録を続けることを大事にしてください。
たとえ小さな一歩でも、その一歩の記録が、次の一歩を支えてくれます。
続けた記録は、やがて自分だけの「木工教科書」になる。
それは、誰にもまねできない、あなただけの学びの証です。
これからも、焦らずに、丁寧に、ノートを書いていってください。
小木曽 賢一
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