新入生たちにとって、手工具を手にするときは待ち遠しいもの。そして、手工具を手にした途端に、苦労も始まる。
手工具の中でもノミとカンナは、買っただけでは使えない。まずは「仕込み」を経たのち、「研ぎ」をマスターしなければならない。
「自分は手先が器用だ」と自負のある人でも、手先・指先を思い通りに使いこなせているわけではない。現代人は平均的に不器用なのだろう。
そして、手先・指先の感覚を研ぎ澄ますのに、手工具を使いこなすプロセスほど優れているものはない。スタッフの説明を聞いたところで、テキストを読んだところで、「研ぎ」は上手くならない。やってみるしかないのだ。学校教育とは違う学び・習得プロセスが必要なのだ。
ここで大切なのは、「ネガティヴ・フィードバック」回路を発動させることだ。聞きなれない言葉だろうが、赤ちゃんが掴まり立ちする時を考えてみるといい。赤ちゃんは、誰かに教えてもらうでもなく、動画を見て学ぶわけでもない。何度も何度も掴まり立ちを繰り返すことだろう。そして、一度でうまく行くわけもなく、何度も何度も失敗しては転んでしまうことだろう。だからといって、自分には能力がないと諦めてしまうわけでなく、トライアンドエラーを繰り返す中で、身体で覚えていくのだ。
初めから姿勢の制御システムが出来上がっているわけでなく、試行錯誤の繰り返しから、制御システムを作っているのだ。失敗を繰り返した先に、新しいことができるようになる、これこそが人間に備わった優れた能力だろう。
コメントを残す